【こんな症例も治りますシリーズ 482 】『 猫の血尿 』 も適切な診断と治療で治します

上のイラストは、ネコちゃんの特発性膀胱炎の断面図です。
★ 膀胱は、直接尿に組織がさらされないようにする内張りに保護層があり、その層はPSGAGという『特殊な糖タンパク質』で構成されています。
★ ストレスなどで、この層が壊れてしまうと、膀胱炎になりやすいのです。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3oYtssB

 

猫 日本猫 7歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 血尿がなかなか治らない 】とのことで来院されました。

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、去年の夏に血尿がみられたので、近院で診てもらったのですが、その時は原因がわからず、一応、止血剤と尿結石用の療法食を処方されたとのこと。

 

 

■ それでも血尿が続いたため、12月に再度、通院したところ、今度は膀胱炎と言われ、抗生剤も飲むようにと渡されたのですが、次の日に下痢も併発したため、抗生剤は止めてしまったそうです。 年が明けても、血尿がみられることから、ホームページをみて当院で一度診てもらうことにした、とのことでした。

 

 

 

 

 

■■ ネコちゃんの血尿にはいろいろな原因が考えられます。

 

 

① 膀胱炎: 細菌感染や、膀胱結石(結晶)などが主な原因となります。

 

 

② 尿結石: 泌尿器のどこか(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に結石ができることで、出血を起こすことがあります。

 

 

③ 腫 瘍: 泌尿器のどこかに腫瘍ができることで、出血を起こすことがあります。

 

 

④ その他の原因: 交通事故や落下などにより腹部を強く打ったとき、尿路にダメージが加わる場合があり、その際に血尿が生じることがあります。

 

 

 

 

■■ さて、当院で、改めて、血液検査、尿検査、レントゲンおよび超音波エコー検査を実施しところ、泌尿器あるいは尿中に結石や明らかな腫瘍は認められませんでした。

 

 

■ また、尿検査では潜血反応は(3+)でしたが、細菌は(陰性)でした。 これらのことから、このネコちゃんの血尿の原因として膀胱炎、尿結石あるいは腫瘍の可能性は除外できたので、今回の血尿は、『 特発性膀胱炎 』と診断しました。

 

 

■ 『 猫の特発性膀胱炎 』は、体質やストレスや食事などが原因で起こります。 そのため治療をしなくとも数日で治ることもあるのですが、また特発性膀胱炎を再発し、血尿を繰り返す場合がほとんどです。

 

 

 

※ 顕微鏡レベルでは、猫の『 特発性膀胱炎 』は、人間の『 間質性膀胱炎 』の組織構造に非常に似ていると言われています。

 

■ 飼い主様に検査結果と『 特発性膀胱炎 』のお話をしたところ、『 そういえば、このコロナ禍のため、リモートで仕事やお仲間とお話する機会が多くなり、その度に、極端に人見知りのこのネコちゃんは、お部屋の片隅に縮こまっていた 』とのことでした。

 

 

 

■ さて、治療方針としては、飼い主様に尿結石用の療法食は必要ないので止めてもらうこと、リモートをするときは出来るだけネコちゃんに別の居場所を与えてあげること、をお話しするとともに、精神安定の効果を持つサプリメントと特発性膀胱炎用の処方食を処方することとしました。

 

 

■ まだ治療は続いていますが、1週間後、お電話で『 血尿がなくなったみたいです 』と飼い主様が嬉しそうにお話下さいました。

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

 

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